🔮 序章:2012年、分岐点の目撃者として
複利運用継魔です。
今回は投資の話から少し離れ、僅かな違いが世界線を分岐させる現象について、2012年のAI革命前夜に私が目撃した実体験をもとに考察します。
📊 2012-2013年:疑心暗鬼の現場
当時の状況:
- Deep Learningが突如として注目を集める
- しかし第2次AIブームの再来を危惧する声が多数
第2次AIブームとは?: 1980年代に「エキスパートシステム」というAI技術が注目を集めたものの、期待されたほどの成果が出ず数年で下火に。その後「AIの冬の時代」と呼ばれる停滞期が続いた。2012年当時、多くの人が「また同じことの繰り返しでは?」と疑っていました。
現場の空気: 私が当時、某情報技術機関でAI関連業務に従事していた時、現場も経営者も疑心暗鬼でした。過剰とも思える投資が行われる一方で、「本当に回収できるのか?」という不安が渦巻いていた。
それでも投資するしかない理由:
- このビッグウェーブに乗らなければ取り残される
- ハードや基盤ソフトができれば新たな技術が生まれる (簡単に言うと「とりあえず何に使えるか今はよくわからないけど開発するよ。未来の人が考えてね」という感じ)
- その技術が次のブームを継続するかは誰にもわからない
- 投資をやめることは、得られるかもしれない果実を放棄することになる
🌍 日米の明暗
日本の挑戦と限界: 日本でもいくつかの企業が投資を行いました。しかし:
- 米国の圧倒的な研究開発費(Googleだけで年間数兆円規模)
- スタンフォード、MIT等からの高度な人材の集積
- DARPA等の国家プロジェクトとの連携
- これらの前には成すすべがなかった
Googleのジレンマ: 興味深いことに、現在のAI技術の多くの基礎技術を開発したGoogleでさえも、自社ビジネス(検索広告)の崩壊の危機を招くようなAIを公にするわけにはいかなかった。「自分で自分の商売を潰すわけにはいかない」ということです。
そうしている間に: OpenAI等が台頭することとなった。まさに僅かな判断の違いが、世界線を大きく分岐させた瞬間でした。
🔄 再帰性と増幅

技術投資の本質:
- 現在の技術投資が花開くかはわからない
- しかし、そこで生まれた技術が次の大きな変化を生むことがある
- そしてそれは再帰性があり、増幅されるため予測することは困難
再帰的ループの仕組み: 技術開発には面白い現象があります:
- 技術Aが生まれる
- 技術Aのおかげで、今まで不可能だった技術Bが作れるようになる
- 技術Bが逆に技術Aをもっと良くする
- この「お互いを良くしあう循環」が爆発的な変化を生む
具体例:
- Transformer(翻訳技術)→ ChatGPT → プログラミング支援AI → より効率的な開発
- クラウド(ネット上のコンピュータ)→ 大規模計算 → AI学習 → より強力なクラウドサービス
- AI技術 → ヒューマノイドロボット → 労働力革命 → さらなるAI・ロボット需要
⚡ 僅かな違いが生む世界線分岐
2012年の分岐点: もしあの時、主要企業が「第2次AIブームの再来」として投資を控えていたら? もしGoogleが検索ビジネスへの影響を恐れずにAIを全面展開していたら? もしOpenAIが営利団体として設立されていなかったら?
僅かな判断の差が生んだ現実:
- ChatGPTの登場
- 生成AI革命
- 半導体需要の爆発的増加
- NVIDIA株価の1000%超上昇
🎯 投資への応用:世界線分散理論

予測不可能性への対処: 技術革新の再帰的ループと予測困難性を理解すれば、投資戦略も変わります。
一つのシナリオに賭けることの危険性:
- 「AI革命は確実」と断定することはできない
- 「既存技術で十分」と断定することもできない
- 複数の可能性に同時投資することが合理的
世界線分散投資の実践:
世界線シナリオ | 代表銘柄例 |
---|---|
AI革命世界線 | NVIDIA、TSLA |
ロボティクス世界線 | 産業ロボット、サービスロボット関連 |
AI停滞世界線 | KO、JNJ |
地政学変化世界線 | エネルギー、防衛関連 |
新興技術世界線 | 量子コンピュータ関連 |
🔬 技術進化の法則:不確実性の中の確実性
確実に言えること:
- 技術は予想外の方向に進化する
- 再帰的ループが変化を増幅する
- 僅かな違いが大きな分岐を生む
不確実なこと:
- どの技術が主流になるか
- いつブレイクスルーが起こるか
- どの企業が勝者になるか
投資家としての姿勢:
- 特定の未来を予測しようとしない
- 複数の可能性に備える
- 技術投資の再帰的性質を理解する
- 僅かな違いが世界線を分岐させることを前提とした戦略
🌟 結論:分岐する世界線への対応
2012年のAI革命前夜、私たちは疑心暗鬼でした。しかし、「とりあえず投資する」という判断が、いまの世界線を形づくったのです。
未来は一つではありません。だからこそ、複数の可能性を同時にカバーする――それが世界線分散の本質です。
世界線の分岐は今日も静かに訪れる。私はただ、それを観測し、選び取るだけだ。変動率は決してゼロにはならない。だからこそ、選択は続く。
免責事項:本記事は個人的な技術・投資観察の記録であり、投資助言や推奨を目的としたものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。